TORACLE-S 451ホイール化 [CARACLE-S]

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先日、TORACLE-S(CARACLE-S 2016試作車)の累積走行距離が、10,000kmを突破した。週末ライドではTORACLE-COZ(CARACLE-COZ試作車)の出番が多くなったが、引退させたCARACLE-S 2015試作車に代わって毎日のように往復約30kmの通勤に使用している。社員旅行で沖縄に連れて行ったり、飛行機旅行では市販スーツケースに入るコンパクトサイズが役立つ。

折りたたみサイズを大きくしないという条件下では自分なりの完成形に達し、日常メンテ以外に手を入れる機会が減っている。通勤に使い始めたのを機会に、ナローワイドチェーンリングを装着したり、純正のフルマッドガードやカーボン製シートポストへ交換したくらいで、主要コンポは長らく変化がなかった。

最近、勤務先でドロップハンドルを装着した限定モデル「スズカリミテッド」を発売したが、ドロップ化と共にETRTO451(20インチWO)ホイールを採用している。これまでのETRTO406(20インチHE)ホイールと比べると直径が大きいため、走行安定性や走破性が向上し、慣性が大きいため速度を維持することが容易。走行時の機動性がやや低下するが、これは安定性と反比例するものであり、総合的に見て走行性能が向上すると言っていいだろう。

もっとも、CARACLE-Sは406でも充分によく走る。スズカエンデューロで優勝した際の出場車は、406ホイールのCARACLE-Sだった。451化は折りたたみサイズが大きくなることから、CARACLE-Sの「折りたたみサイズ世界最小」という特徴が失われる。個人的には飛行機旅行に携行することを考えて、451化は念頭になかった。ところが、スズカリミテッドに試乗した複数の人からドロップ化より、451化を高く評価する声が寄せられた。終いには、フラットハンドルバーの451モデルを要望する声まで寄せられた。これは、ドロップハンドルによるポジションの最適化を重視していた私にとっては、予想外だった。

そんなわけで、451化したCARACLE-Sの有効性を改めて検証したいという気持ちが沸いてきた。もちろん、スズカリミテッドの試乗はしているが、ポジションもコンポも違う状態なので、純粋にホイールサイズだけの比較はできなかった。

考えてみればCARACLE-Sを451化しても、同じ451車ではもちろん、406の折りたたみ自転車と比べても、圧倒的に折りたたみサイズが小さい。匹敵しうるのは16インチのブロンプトンや14インチのトレンクル、それと走破性が劣る12インチ以下の超小径車(A-BIKE、キャリーミー等)くらいだ。もちろん、CARACLE-Sより走るモデルなどない。

そして、451化したCARACLE-S(スズカリミテッド)が純正スーツケースに、ギリギリ収まる事がわかった。飛行機輪行に支障がないとなれば、最大の懸念が消滅する。

だからといって、2016モデル(の試作車)である私のTORACLE-Sは、現行rev.3フレームのようにキャリパーブレーキの装着も想定した台座が設けられていない。メーカーの人間だからといって気軽にフレーム交換できるわけではないし、何より世界に1台しか無い黄色のCARACLE-Sを活用するのが最優先事項。

「条件付き」だが451タイヤと車体のクリアランスは問題なさそう。簡単な方法としては、調整幅の大きいVブレーキや、Vブレーキ(カンチ)台座をずらすオフセッターを使用する方法がある。ただし、力率や剛性、強度の懸念がある。一方で何らかの手段でキャリパーブレーキ化を果たせれば、性能や見た目の向上はもちろん、現行シマノロードコンポとの互換性が確保できることが大きなポイントだ。

前輪はフォーククラウンがテーパー状になっていることが難易度を上げるが、貫通穴前側にスペーサーを挟めばスズカリミテッド同様にキャリパーブレーキ本体を装着できる。貫通穴後側をザクリ加工すれば、固定用の枕頭ナットも装着できそうだ。ブレーキシューの高さも丁度よい。

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上司にザグリ加工に用いるエンドミル(切削工具)の置き場所を尋ねたら、代わりに出てきたのがこのカーボンフォーク。・・・なんか、予想外の変化球を喰らった(笑)。

実のところ、自分でも451規格のカーボンフォークを物色していたりもしたのだが、リア側が上手くいかなければ無駄になりかねないし、ヘッドチューブの短いCARACLE-Sで問題を生じないかの懸念があった。アップグレードパーツとしてカーボンフォークの有効性を検証しろ、ということだと解釈してありがたく拝借。黄色ではないが、黒ならタイガース的にはむしろ好都合の配色になる。

これで前輪側は目処がついた。しかも元のフォークを加工するという保険もある。そこで難題の後輪側に取り組むことにした。

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どうせならなんとかキャリパー化したいし、フロントフォークも黒くなるし、ということで確保したのが検品不合格のrev.3バックフォークのブラック。と言って、これをポン付けすれば解決するほど甘くはない。

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まずは検品不合格理由への対処。製造時 にパイプ内部に異物(溶接屑?)が残ってしまったようで、カラカラ音がする。走行上の危険性や機能上の支障があるわけではないが、気になる人は気になるだろう。それなりに大きいようで、空気抜き穴から出てこない。そのまま使用してもよいのだが、簡単に対処できることはやっておいた。具体的にはパイプ内に瞬間接着剤を流し込んで、異物を固定した。

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接合部を分解して元々のバックフォークを外す。

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rev.3バックフォークを試しに装着してみる。予想通り角度が合わず、上下の接合部を正常に組み立てることはできなかった。これは当然で、2016とrev.3では設計を変更しているし、製造工場も異なる。だが、恐れていたよりは寸法差が少ない。これなら、可能性はある。

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詳細は説明しないが、良い子は絶対に真似をしてはいけない作業。熱処理を加えたアルミ合金を変形させると大きく強度が低下するので、完成後のアルミ製自転車の矯正はタブーだ。私もフロントフォークやメインフレームの矯正をする気はない。何が起きても自分で責任を取る覚悟がなければ、やってはいけない行為だ。

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何度か仮装着しつつ作業を繰り返し、無理なく装着できるようになった。本装着の前にブレーキを装着してホイールとの位置関係も確認し、Vブレーキ(カンチ)台座のシャフトを取り外す。

ブレーキ本体はひとまず手持ちのシマノBR-5600をチョイス。SUPER SLR規格なので、骨董品のシュパーブプロのブレーキレバーとも力率の互換性があって都合が良い。105はこの後のBR-5700からNew SUPER SLR規格に変更され、従来のSUPER SLR規格レバーで引くと効きすぎて危険なので「非対応」となった(逆の組み合わせは性能を100%発揮できないが「可能」とのこと)。いっそのことレバーに合わせてブレーキ本体も手持ちのシュパーブプロにしてしまおうかと思ったが、最近のブレーキに慣れた身には制動力が物足りないし、引きも重い。タイヤとのクリアランスを確保するためにはダブルピボットブレーキの方が都合が良いこともあって、この選択となった。

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チェーンステイ側にある折りたたみ関節を社内では小BBと呼んでいるが、年式が違うので大きめのガタがある。調整用のシムを挟んでガタを無くし、シートステイ側の関節も組み付けていくが、ちょっと矯正が行き過ぎたようだ。何とか調整機構の許容範囲に収まっているので、ひとまず組付けを続行。

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リアディレイラー、チェーン、ホイールを装着し、ワイヤー類も接続して調整する。ブレーキワイヤーのアウターはひとまずも元の長さのままで使用可能のようだ。ワイヤーが急角度で曲がるブレーキ本体接続部には、スズカリミテッド同様に2wayリードパイプ(経路変更パイプ)を挟む。それでもインナーワイヤーは少し飛び出すが、この時点ではVブレーキに戻す可能性を考えてカットせずそのまま。

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これで難題の後輪側が一応の形になったので、前輪側の作業に入る。カーボンフォークのコラム(ステアリング菅)をカットし、切断面をヤスリで軽く整える。

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フォークにブレーキを仮装着し、マッドガードQRの取付プレートも装着。

アルミ製のCARACLE-S純正フォークはスターファングルナットやプレッシャーアンカーを用いない。2015(rev.0)~2016(rev.1)モデルはコラム内部にナットが溶接され、それも通常M6サイズの引き上げボルトをM8に大径化している。短いヘッドチューブと長いハンドルポストにより、ヘッド付近にテコの力が強く加わるので、強固に固定するための工夫だ。2017(rev.2)以降はコラムパイプ内側に直接ネジ切してM23という大径プラグで固定するという、さらに強力な構造になっている。

ところが、既製品のカーボン製フォークにはそんな工夫はされていないし、比較的強力な固定方法であるスターファングルナットも使えない。それだけに発売を検討するためには、実地検証が必要になる。用意したプレッシャーアンカーは2種類で、左がHIRAME製で、右がCARACLE-COZ純正品。カーボンフォークで使用するには長い方が安心だが、まずはより短い(軽い)HIRAME製を試してみることにした。COZ用は上部に「ツバ」があるので、その分フォークコラムを短くカットしなくてはならない。後からカットすることはできても、伸ばすことはできないので、試す順番は必然だ。これで固定力が不足するようなら、COZ用に交換してみるつもりだった。

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ヘッドパーツ周辺の汚れたグリスを拭き取り、新しいグリスを塗布して組み付けていく。しばらく前から軋み音が生じていたので、丁度よいグリスアップの機会になった。


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ハンドルポストをフォークコラムに差し込み、トップキャップボルトをセットしようとしたらアンカーと干渉した。M8ボルトのテンションに耐えるCARACLE-Sのゴツいトップキャップは、下への張り出しも大きい。

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深さが必要なのでアンカーをセットし直した。HIRAMEだからセット位置を深くできたが、ツバのあるCARACLE-COZ用キャップを併用するとなるとかなりフォークを短く切らねばならない。フォークコラムとハンドルポストが短くしか接しなくなるので、この方法は無い。あと考えられるのは一般的なM6ボルト用トップキャップとHIRAMEの組み合わせか? これならアンカーを浅くできて、ハンドルポストの固定ボルトによる外側からの力を、内側からアンカーで支えられる。より固定力が増す可能性があるので、現在の方法で緩むようなら試してみよう。

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時間は前後するが、フレーム周りの作業に先立って、ホイールを準備していた。今回の451化ではCARACLE-COZに装着していたホイールZ-TOUGH2を流用することにしたが、COZ用ということはスズカリミテッドに採用している前輪74mmではなく、ロード規格の100mm幅ハブが装着されている。

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そこで、社内に転がっていた(笑)ゴールドの74mmハブで組み替えた。色こそ違うが、CARACLE-Sの標準仕様のホイールKやCOZオプションのZ-TOUGH2で使用しているNOVATECH製の同型。フランジサイズが同じだったので、スポークはそのまま流用できた。ついでにニップルもゴールドにしようかとも思ったが、その時点では451化が上手くいく確信がなかったので、最低限の変更にとどめた。

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前輪側もワイヤー類をセットして調整し、走行可能状態になったので近所を試走。ホイール自体は大径化で微妙に重量が増えているだろうが、ミニッツタフ20×7/8サイズを装着したので、タイヤ幅は32mmから23mmに細くなっている。そしてフロントフォークのカーボン化のせいか走り出した途端に加速が軽く、スピードが乗りやすいことを体感した。アルミフレームで23mm幅のタイヤだと突き上げがキツいかと心配していたが、カーボンフレームのCOZと比較しても遜色ない乗り心地。恐らく、ハンドルバー、フロントフォーク、シートポストがカーボン製なことが好影響を与えているのだろう。

ちょっと乗っただけでも走行性能向上を体感できた。走り始めは少しハンドルが右に切れやすいように感じたが、これは無理やり違う年式の後フォークを装着したせいだろう。恐れていたほどではなかったし、しばらく走っていると慣れてわからなくなった。むしろ気になるのはフロントブレーキBR-5600の制動力が低いこと。油分を拭き取ったり、トーインを少なくしたりしたが、改善は限定的で効きがぬるい。最近の効くブレーキに慣れてしまったせいで物足りないのかとも思うが、後輪側はそう悪くない効きだ。あと考えられる可能性はシューの劣化くらいだが、これも前だけというのは不自然。とりあえず、近いうちにブレーキシューを交換してみよう。

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ちょっとした課題は残ったが、試走の結果は上々。すぐに406に戻すことはなさそうなので、各インナーワイヤーの末端をカットしてキャップをかぶせた。後輪側にマッドガードQRの取付プレートと本体を装着した。。

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上で「条件付き」と述べたのは、タイヤ幅の制約があるからだ。カーボンフォークの前輪側はまだ余裕があるが、後輪側は取付けプレートとタイヤのクリアランスがギリギリ。1-1/8どころか1インチ幅のタイヤも厳しそうだ。最近のロード用キャリパーブレーキなら、太めのタイヤの装着を想定してクリアランスが大きめになっているので改善するかもしれない。もっとも先ほどの試走の乗り心地なら、タイヤを太くする必要はなさそう。

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前後にマッドガードを装着したのがこの状態。無事に451化を達成できたので、これを機会にパーツ構成を見直そうと思っている。走行距離10,000kmを越え、実は各部のパーツが結構消耗している。先日もBBのベアリングにガタがあることを発見して、今は間に合せのBBを装着している。ブレーキレバーのフーデットカバーやバーテープも傷んできているし、ハンドルバーもエアロタイプから丸断面のバーに替えたいと思っている。

とりあえず走れるようにはしたが、折りたたみ機能の検証はこれから。改めて軽量化も追求していきたい。とは言え通勤で使用することを考えると、耐久性に優れたタイヤとマッドガードが必須。どうしても重くなってしまうので将来的には旅行用にもうひとつホイールが欲しいところ。しばらく悩ましくも楽しい検討が続きそうだ。

以下は余談だが、公私交えたCARACLE-Sドロップ化の苦労談。

スズカリミテッドで451ホイール採用したのは、大径化による走行性能向上という狙いももちろんある。しかしながら、もうひとつの大きな理由は、キャリパーブレーキの採用によりロードコンポとの互換性を回復させることだ。2009年にデュラエース7900系で採用されたNew Super SLR規格はショートVブレーキとの互換性が失われ、他グレードもモデルチェンジの度にNew Super SLR化していった。ディスクブレーキに力を入れるシマノがもはやショートVを振り返ることはなく、New Super SLR規格のラージサイズキャリパーブレーキが発売されることもなかった。小径車は接地面積とエアボリュームの確保ために太めのタイヤが装着される事が多いが、ディスクブレーキはまず確実にサイズ増と重量増を招く。小型軽量を重視する折りたたみ自転車にとって、受難の時代が続いている。

キャリパーブレーキ化によって現行ロードコンポの装着も可能になったわけだが、CARACLE-Sには小径というだけでなく、フロントシングルという制約がある。フロントディレイラーを装着したカスタム例もあるが、私自身は消極的だ。折りたたみ機能を全く損なわずにFDを装着することが困難であり、重量増というデメリットも大きい。シクロクロスやグラベル人気もあって、超ワイドギア比のリアスプロケットが普及しつつある現在、重複ギア比の多いフロントダブルの優位性は低下している。

ところが、フロントシングルとなると、ワイヤー式のドロップハンドル用シフターがなかなか無い。ギブネールは下ハンで使用できないし何より格好が悪い、ヨシガイのウィングシフターはフリクションだし、バーコンはブラケットポジションで使用できない。そしてシマノ製デュアルコントロールレバーは操作性に優れるが、大きさが大きく、フロント用シフターを除いたフロントシングル対応品が(油圧ディスクブレーキ用を除いて)見当たらない。

結局、発売から約30年を過ぎた今でも、サンツアー製手元変速システム「コマンドシフター」を越えるシフターが見つからないほどだ。軽量でブラケットポジョンでの操作性に優れ、インデックスプレートの交換により旧10Sまではシマノコンポにも対応している。もちろん、すでに入手困難であり、スズカリミテッドでは軽量でコストが低いバーコンを採用せざるを得なかった。

重量増無しでシマノ製コンポを用いて11~12速化するためには、電動変速Di2の導入しか無いと思われるが、さすがに高価過ぎるし、ショートVブレーキに対応したレバーは無いのでこれまでは搭載不可能だった。後はSRAMやSENSAH等の1Xシステムを採用する方法だが、これまた互換性やコスト、性能、信頼性などの課題がある。

コンポーネントの性能は年々向上していくが、反面で汎用性が失われ、用途が限定されていく傾向がある。9速時代まではロード用とMTB用のコンポを組み合わせることも不可能ではなかったが、10速以降は難しい。残念ながら、小径車で使いやすいコンポはどんどん減っている。何とか工夫を重ねて、性能の良い最新コンポを活用できる方法を探っていくしかない。

ご注意:本記事は、久行の個人的趣味とテック・ワンの技術検証を兼ねて行っているもので、同様のカスタマイズに対して安全性や耐久性を保証するものではありません。安全性に問題がなく、ご要望の多いものは純正品に取り入れる可能性もあります。興味のあるパーツや加工については、ご意見をお寄せください。

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